日焼け止め(サンスクリーン剤)の注意点

2022.April


日焼け止めの思わぬ落とし穴

日差しが強い季節になってきました。太陽光線によるシミやシワなどは光老化と呼ばれ、自然な老化のための変化は20%で、残りの80%は紫外線をはじめとする太陽光線による皮膚障害とされています。この光老化を防ぐ手段として、有効なものの一つに日焼け止めの塗布があります。内外の研究から、「SPF15、PA+の効果があれば、継続して使用することにより、光老化を防ぐことができる」とされています。しかし、「私はSPF30、PA++の製品を使っているから大丈夫」、と思っていると思わぬ落とし穴にはまってしまいます。また日焼け止めを塗っていたのに日焼けしてしまったという経験をお持ちの方も多いのではと思います。その理由をお話しします。

SPF、PAの測定を行う時は、規定量の2㎎/㎠の量を肌に塗って紫外線を当てて測ります。つまり、この量を塗った場合にSPF30、PA+の効果が得られるのです。ところが我々の調査では、多くの方はジェルタイプで規定量のせいぜい半分、乳液タイプでは3割程度しか塗っていないという結果が得られています。そのため、実際の効果は表示されているSPF、PAの半分以下に落ちていて、光老化を防ぐことができる効果が得られていない可能性があるのです。「こんなに厚塗り?」と思えるくらい塗らないと表示された効果は得られないと考えてください。できれば、二度塗りすることをお勧めします。

日焼け止めの基本「塗り方」と「盲点」

もう一点留意すべきことをお話しします。日焼け止めは手に取ってから顔に塗りますので、十分量を手に取ったとしても手に残ってしまう量が無視できません。我々の調査では、乳液の場合は34%、ジェルの場合は20%くらいが手に残ってしまうことが分かっています。ならば、手に残ることのないスプレータイプなら安心かというとこれも問題です。スプレータイプでは十分な効果が得られる量の15%程度しか塗られていないことが分かっています。スプレータイプは垂れてしまうほど塗らないと十分な効果が期待できないのですが、これは現実的ではありません。スプレータイプはほかの日焼け止めと併用する補助的な製品と考えておいた方が間違いありません。

それからもう一つ、塗り忘れが起こりやすい部位があります。それは耳です。光老化の最も進んだ状態は皮膚がんですが、耳に皮膚がんができることは少なくありません。耳とうなじは考えてみれば最も太陽光線を浴びやすい部位です。この部分にも忘れずに日焼け止めを塗るようにしてください。

株式会社アクシージア 皮膚科学顧問
川島 眞 (かわしま まこと)

株式会社アクシージア 皮膚科学顧問
川島 眞 (かわしま まこと)

東京女子医科大学名誉教授
日本コスメティック協会理事長

  • 1978年
    東京大学 医学部医学科卒業
  • 1984年
    フランス パリ市 バスツール研究所乳頭腫ウイルス部
  • 1986年
    東京大学 皮膚科講師
  • 1992年
    東京女子医科大学 皮膚科 主任教授