さわやかな風が心地よく街路樹の葉も青々と生い茂り、目にあざやかに映るこの季節。
去る5月8日には3年余りに及んだ新型コロナウイルス感染症が、法律上の扱いで「5類感染症」となりました。季節性インフルエンザと同等の扱いとなり、3年余りに及ぶコロナ禍が異なるステージに移行します。まだまだ油断禁物の日々は続きますが、5月は過ごしやすい気候もあって生活面でもベストシーズンと言える時期です。晴天の日も多くベストシーズンなのですが、美容ライフの面では注意したい点があります!
5月の肌環境は総じて快適。唯一、太陽光ストレスが年間最高水準へ!
5月は花粉の飛散も減り、花粉症に悩まされた人もようやく解放され、平均気温も東京の場合では20℃前後と、肌にとっても快適な時期となります。
一方、太陽光照射量は晴天も多いことから年間最高水準となり快適な5月でも唯一、太陽光対策(紫外線A波、紫外線B波、ブルーライト、近赤外線)には本腰を入れて取り組む必要があります。
【1】紫外線B波(UVB)⇒シミの原因に!
紫外線B波(UVB)は皮膚の表皮まで届き、長時間浴び続けると色素細胞(メラノサイト)を刺激。シミの元となる色素メラニンを大量に生成します。このメラニンは蓄積するとシミとして肌に定着し、皮膚に炎症が起こり、真っ赤で痛い日焼け(サンバーン)と、その後に黒っぽくなる日焼け(サンタン)など、急性障害を引き起こしてします。
【2】紫外線A波(UVA)&ブルーライト⇒シワの原因に!
紫外線A波(UVA)およびブルーライトは波長域が近似していて、真皮にまで届きます。
さらに厄介なことに雲やガラスもすり抜けて肌に届くので、天候の悪い日でも室内のガラス越しでも防ぐことができません。この太陽光は真皮部分のコラーゲンやエラスチンを変性させ、シワの原因となることが分かっています。
【3】近赤外線⇒たるみの原因に!
近赤外線(NIR)は真皮のさらに下、皮下組織にまで届き皮膚の奥深いところでコラーゲンやエラスチンの変性を引き起こします。そのためシワより深刻な「たるみ」の原因となることが分かってきています。
「たるみ」にまで至ってしまうと化粧品レベルでのケアは困難となってしまいます。
この3点からして、太陽光は肌にとって大敵で特にUVA、ブルーライト、そして近赤外線は慢性障害とも言えるシワ・たるみの原因となるので「光老化」として語られています。
また、この世に生を受けた瞬間から年齢を重ねるにつれ、生理的老化に太陽光による「光老化」が加わり、肌の老化が進むことに。老化にとどまらず、皮膚がんなどの悪性の腫瘍、眼球疾患の誘発なとも報告されています。
環境省による「紫外線環境保健マニュアル2020」によれば、紫外線が関係していると考えられている病気が下図のように示されています。
〈紫外線が関係していると考えられている病気〉
5月病、眠気…5月特有の不調
5月病とは医学的な病気ではありませんが、環境変化のストレスが原因で無気力な状態になったり、眠れなくなったりと様々な不調を指す言葉です。酷いときには「うつ病」へ進行してしまうケースもあります。特に新入生や新入社員が4月からの新たな環境がストレスとなり、ゴールデンウィーク後あたりに、適応障害として不調に陥ることが多いことから「5月病」と形容されています。4月から環境が一変した方は環境変化ストレスを意識し、ストレスと上手につきあい、回避する心がけが必要です。
春眠暁を覚えず。眠気も、5月によく感じられる方が多いのではないでしょうか?特に日中の眠気は、冬~春への季節の変わり目の温度変化や、一日の寒暖差にカラダがついていけず自律神経が乱れることが要因の一つとも言われています。また5月病同様に環境変化ストレスという心因的な要因も、自律神経の乱れに影響しているものと思われています。睡眠は健康のバロメーターでもあるので、夜間の睡眠を質の良いものにする工夫や、起床時に朝日を浴びて体内時計をリセットすることも効果的と言われています。
紫外線とビタミンD
太陽光は肌にとってまるで悪者のようですが、紫外線には殺菌作用に加え骨にとって必要なカルシウムの吸収を促すという大切な働きがあります。
ビタミンDの役割
ビタミンDは食物から摂取したカルシウムを腸で吸収させる大切な役割を担っていて、ビタミンDの働きにより腸からのカルシウムの吸収は2〜5倍程度に増加すると言われています。
カルシウムは骨の強度を高める重要な栄養素で、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が阻害され骨軟化症といった病気に繋がることになってしまいます。
海から陸にあがり生活するようになった生物は、重力に耐えるために強い骨が必要となり、食事からだけでは十分なビタミンDが摂取できないことから、紫外線により自らのカラダでビタミンDを生み出す仕組みを身に付けたのだそうです。多くの人がビタミンDの必要量の半分以上を紫外線による生成に依存しているそうです。
紫外線対策の功罪
肌にとって紫外線を含む太陽光は「シミ・シワ・たるみ」などの要因になることから太陽光対策は必須ですが、日本では妊婦さんおよび乳幼児のビタミン欠乏症が増加しているという問題も起こっています。
太陽光、とくに紫外線による障害を恐れるあまりに過剰に日光に当たらない生活を継続すると、ビタミンD欠乏症に陥り成長期の子供の場合は、骨の強度が低下し曲がりやすくなってしまうことも。成人であれば骨軟化症を引き起こすこととなります。
紫外線対策とビタミンD生成を促すために日光に当たるということは相反することになり、そのバランスを考えることは、正直難しいところです。
紫外線対策を行いながらビタミンDを欠乏させない暮らし方
ビタミンDは食物としては、脂身の多い魚類やきのこ類にたくさん含まれていますが、その他の食品には少ししか含まれておらず、必要量を食事だけから摂るのは困難とされています。せめて、下表記載の魚類やキノコ類を意識して食事に取り入れて、牛乳などから“カルシウムもしっかり補う食生活”を送りながら、肌の紫外線対策もしっかり行う生活をオススメします。
環境省の「紫外線環境保護マニュアル2020」では、詳しく丁寧に紫外線全般について説明されていますので是非参考にしてみてください。
食品中のビタミンD含有量(1日必要量は10〜25μg)
環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」より抜粋
「ベストシーズン 快適な5月のスキンケア」いかがでしたでしょうか?
夏を迎える前の新緑の季節は過ごしやすい反面、日差しも強くなっています。紫外線対策をしっかり行いながらもビタミンDを欠乏させない暮らし方をしたいものです。
さて次回のテーマは「湿度とスキンケア」をお伝えします。