マスクによる皮膚トラブル

マスクによる皮膚トラブル

マスクの中は高温多湿

手洗い、うがいとともにマスクは我々の新しい生活様式のなかで欠かせない存在になっています。早く解放されたいものですが、今年の冬はまだまだマスク着用が続きそうです。さて、マスク着用で生じてくる肌トラブルはいくつかあります。その一つが肌荒れです。ファッショナブルなウレタンマスクは肌触りも柔らかく、肌荒れの心配は少ないのですが、飛沫拡散防止効果が弱いことが問題となり、不織布マスクが推奨されています。

マスクの中は高湿度、高温度の状態が続いています。肌がこの状態に置かれますと、肌内部からの水分蒸発が増加し、バリア機能が低下してしまい、外からの刺激に弱くなっています。そこに不織布マスクのごそごそした摩擦刺激が加わると、肌荒れを生じてしまいます。この肌荒れには、ひどい場合は適切な炎症を治める塗り薬の使用とバリアを補強する保湿化粧品を使用することが大切です。治った後ももちろん保湿化粧品は継続します。マスクを外せる状況にあればなるべく外して、洗いすぎない適切な洗浄を行ってから塗り薬、保湿化粧品を使用することも大事です。

また、マスクの中は高温多湿の夏の肌に近い状態です。そのため、皮脂腺の活動性が上がり、皮脂を食べて生きている毛穴のニキビ菌が増殖してニキビが起こりやすくなります。また、皮膚表面の細菌の増殖にも好都合な状態ですので、ブドウ球菌が増えておできもできやすくなります。

マスクニキビは世界的な問題に

このように、マスクの中では初夏にニキビが悪化するのと同じような状態が常に起こっていることになります。マスクニキビは世界的に問題になっており、mask(マスク)、acne(アクネでニキビのこと)をくっつけてmascne(マスクネ、マスクニキビのこと)と呼ばれています。ニキビには適切な治療を行うことが大切ですが、適切な洗顔とノンコメドジェニック(ニキビの始まりのコメド、面皰を作らない)化粧品を選んで使用してください。

肌荒れ、ニキビとともに、マスクによる肌トラブルの厄介なものに、両頬にうす茶色のシミが広がる肝斑があります。肝斑は外的刺激による炎症を伴って悪化するため、マスクがこすれる目の下あたりに帯状にシミができてくる患者さんが増えています。不織布マスクの下に柔らかいガーゼなどを入れて予防する工夫も必要でしょう。
マスクから解放される状況が待ち遠しい毎日ですが、何とか肌荒れ、ニキビ、肝斑を最小限にとどめる努力を続けましょう。

川島 眞
株式会社アクシージア 皮膚科学顧問
川島 眞 かわしま まこと
東京女子医科大学名誉教授
日本コスメティック協会理事長
  • 1978年 東京大学 医学部医学科卒業
  • 1984年 フランス パリ市 バスツール研究所乳頭腫ウイルス部
  • 1986年 東京大学 皮膚科講師
  • 1992年 東京女子医科大学 皮膚科 主任教授
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